|
ヒトラーとナチと第2次世界大戦をテーマにしたドキュメンタリーはダースで数えるほどあるが、この作品は『ヒトラー、ある経歴』という題名どおり、彼の人生を語ることに重点をおいている。従って、個人的な時間での彼の姿が見られるのが特徴で、宣伝のために計算したものとばかりもいいきれぬようなやわらかい表情や孤独感にみちた雰囲気がところどころに現れているのが面白い。ことに、ヒトラーが政敵をすべて葬り、反抗者をテロで抑え、信奉者たちに守られて全権力を手にしたとたん、判断力を失い、しかもシステム上誰も彼に反対できなくなっていたため、たちまち自滅への道をたどり始めるありさまの描写は、今日の社会にもこれと似た例がたくさんあることを思いださせる。さらに、1940年にはりっぱだった建物や豊かそうだった人たちが、わずか5年後には廃墟とそこを逃げまどう者の群れに化した事実も、クリスチャン・へレンドルファー監督はしっかりととらえている。
|